東大(IOG:東京大学高齢社会総合研究機構)の就労セミナーから生まれた 

 



第3回セカンドライフ講演の詳細内容

(前文)
 一般社団法人セカンドライフファクトリー主催の第3回セカンドライフ講演会「シニアの就労が成功するために」が1220日、東大柏キャンパス総合研究棟6階会議室で開かれました。講師は、田中豊嗣・佐倉市シルバー人材センター事務局長。約1時間20分に渡り、千葉県佐倉市シルバー人材センターでの高齢者向け就労サービスの成功例を紹介しました。

 講演終了後、質疑応答があり、その後、受講者113人が●グループに分かれて、情報交換会を行いました。
 以下は、田中氏の講演要旨と質疑応答の要旨です。

(本文)
 佐倉市の総人口は平成25年現在、約177千人です。この内、65歳以上の高齢者が占める割合(高齢化率)は24.7%です。つまり4人に1人が65歳以上の高齢者なのです。

 佐倉市シルバー人材センターは、昭和5610月に設立され、平成2511月現在の会員数(60歳以上95歳まで)は1,029人です。男女別では、男性会員が754人に対し、女性会員は275人です。60歳以上の佐倉市民60,084人(平成253月現在)のうち、佐倉市シルバー人材センターに入会している人は、わずか1,029人(1.71%)に過ぎません。会員の平均年齢は70.8歳です。しかし、会員が求人先と結んだ契約高は約4億5千万円(平成24年度)という実績を挙げています。

 佐倉市シルバー人材センターの会員たちが請け負っている仕事(職群)を、その仕事に従事する会員数の多い順に並べると、第1位は家事援助(221人)、第2位は植木せん定(124人)、第3位は公共施設での施設管理や清掃など(120人)、第4位は草取り(75人)と印刷物の配布(75人)、第6位は草刈り(34人)、第7位は大工仕事や電気工事など(31人)となっています。

 このうち植木せん定は、まず8カ月間の技術研修を受けたのち、1年間の見習いを経て、3年目にようやく独り立ちして仕事を請け負えるのが実情です。こうして124人の植木せん定作業員が獲得した収益は約1億円(平成25年度実績)に上っています。

 最も従事者が多い家事援助は、高齢者の自宅を訪ね、料理をしたり、掃除をしたり、病院に付き添ったりする仕事です。これはシルバー人材センターならではの仕事です。家事援助に従事している221人の会員のうち、70人がヘルパーの資格を持っています。

 介護保険を使った介護サービスの需要は年々増えており、ヘルパーたちが余りの忙しさに悲鳴を上げています。佐倉市内には、特別養護老人ホームが8カ所ありますが、待機者が多くて2〜3年待ってもなかなか入所できません。そこで佐倉市シルバー人材センターでは来年4月、「介護事業所」を開設する予定です。現在第1期生16人が勉強会と講習会に参加しています。元気な高齢者が働ける介護事業所は、千葉県内の他のシルバー人材センターではまだ開設していません。

 現在家事援助サービスを受けている高齢者から「同世代の人から介護して欲しい」との要望が時々あります。例えば、料理や話し相手です。

 介護保険制度が始まってから、介護事業に乗り出す業者は増加の一途をたどっていますが、そこで高齢者でも出来る「要支援」や「要介護度1〜2」などの比較的軽度な介護の仕事をシルバー人材センターが引き受ける事にしました。また私たちは「ワンコイン支援事業」という新たなプロジェクトも来年4月から始めようと考えています。つまり、佐倉市シルバー人材センターの会員が1500円で、高齢者の家庭の電球・蛍光管の交換、ゴミ出し、簡単な大工仕事など短時間で出来る作業を請け負うのです。通常、シルバー人材センター会員が請け負う作業は2時間以上の作業です。しかし、高齢者の家庭では、30分以内で終わるような簡単な作業をやって欲しいという要望が多いのです

 超高齢化社会の中で、私たちシルバー人材センターの役割は何でしょうか。それは元気な高齢者の就労支援と高齢社会のニーズに対応する為、介護や家事援助を柱とした事業を展開することです。

(質疑応答)

(問)シルバー人材センターの入会率を高める方法はないのでしょうか。それからホワイトカラー出身者にも、シルバー人材センターがもっと仕事を紹介することは出来ないのでしょうか。

()シルバー人材センターの仕事を世間の人たちに知ってもらうように、私たちがもっと努力しなければなりません。ホワイトカラーを卒業した方は、私たちが紹介する仕事を「草取りはダメ、家事援助もダメ」と言わずに、仕事をえり好みしないで「何でもやります」と言えるように頭を切り替えて欲しい。

()ホワイトカラー出身者は頭を切り替えろというお話ですが、ホワイトカラー出身者として、敢えて反論致します。私は「職業に貴賤なし」と考えておりますし、「頭脳労働が肉体労働よりも価値がある」とも思いません。しかし、草取りやふすまの張り替えなどの仕事に「生きがい」を感じられるとも思いません。私は現在70歳ですが、もっと「生きがい」の実感できる仕事をしながら、残りの人生を全うしたいと思っています。ですから、シルバー人材センターも、こうした要望に応えて欲しいのです。

(答)ホワイトカラー出身者向けの仕事が少ないのは事実です。11月2日夜に放映されたNHKスペシャル「熟年サバイバル術」という番組を見ていたら、番組の出演者が「生きるための仕事がしたい」と話していたので、ドキッとしました。つまり、生きがい対策を求めているのですね。私たちもいろいろな分野の求人を開拓しなければないと痛感させられました。

(講師の略歴)
昭和464月   日本航空入社
        米国アンカレッジ空港支店旅客・貨物マネージャー
        本社空港本部課長補佐
        ホンコン空港所旅客部次長
        名古屋国際空港支店旅客部部長
        マレーシア・クアラルンプール空港所長
        新東京国際空港VIP担当
平成223月  日本航空定年退職
平成2211月 佐倉市シルバー人材センター入会
平成234月  同センター常務理事兼事務局長


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